「うちはまだ大丈夫」が一番危ない?親が元気なうちに家族で話しておきたい4つのこと|滋賀県の「空き家発生予防21カ条」と、帰省で切り出す順番【滋賀・2026年10月時点】

「実家のことは、いつか考えないといけないと思っています。でも、親に『この家どうするの』とは聞きづらくて」——滋賀県内で相続や空き家のご相談をお受けしていると、相続が起きたあとのご相談の中で、こうした言葉を聞くことが少なくありません(ご相談内容をもとに再構成した一般的な例です)。滋賀県は、2026年7月30日更新の広報レポート「『うちは まだ大丈夫』が一番危ない? 実家が空き家になる前に考えたいこと」で、この問題を取り上げています。親の高齢化・施設入所・転居・相続をきっかけに実家が空き家になるのは珍しくないこと、そして空き家になってから考えるより「空き家にならないように準備する」ことが大切だという内容で、家族で話しておきたい4つの項目を挙げています。この記事では、①なぜ「まだ大丈夫」が危ないのか、②滋賀県が勧める「家族で話しておきたい4つ」とそれぞれの聞き方、③帰省のときに切り出す順番、④話したあとに親が元気なうちにできる準備、⑤滋賀での相談先、の順に整理します。
目次
なぜ「うちはまだ大丈夫」が危ないのか
空き家は「よくある理由」で生まれる
滋賀県の広報レポートは、総務省の令和5年住宅・土地統計調査を引いて、全国の空き家は約900万戸で過去最多、住宅のおよそ7戸に1戸が空き家であること、滋賀県でも空き家は約8万2千戸あることを紹介しています。
県が2022年(令和4年)3月に発行した「空き家ガイドブック~空き家発生予防21カ条~」は、その第01条を「それも空き家予備軍です。」として、年に数回利用していたり倉庫代わりに使っていたりしても、普段住んでいなければ空き家につながると説明しています。続く第02条「身近な問題です。」は、所有者の死亡、施設への入所、転勤といった「よくある理由」で空き家が生じると説明しています。ある日、実家が空き家になるのは、特別なことではありません。
「話し合わずにいる」ことが、空き家の原因になる
同じガイドブックの第07条「相続で困ります。」は、次のように書いています。
——滋賀県「空き家ガイドブック~空き家発生予防21カ条~」第07条
つまり、「まだ大丈夫」と先送りしていること自体が、空き家を生む原因になり得る、というのが県の整理です。相続が起きてから「父は家をどうしたかったのか」「兄弟のうち誰が引き取るのか」を話し始めると、親の意向を確認できないまま、相続人同士の合意だけで決めなければならなくなります。当社のご相談でも、親御さんが元気なうちに一度でも話していたご家庭は、相続後の進め方で迷う場面が少ないと感じています。
出典: 滋賀県 広報レポート「『うちは まだ大丈夫』が一番危ない? 実家が空き家になる前に考えたいこと」(更新日2026年7月30日)/滋賀県 空き家発生予防啓発冊子「空き家ガイドブック」(令和4年3月発行・ページ更新日2022年3月9日)/同ガイドブック 第1章(PDF)(第01条・第02条・第07条)
滋賀県が勧める「家族で話しておきたい4つ」と、それぞれの聞き方
県の広報レポートは、家族で話しておきたいことの例として、次の4つを挙げています(原文のまま)。
- 「将来、この家には誰が住む?」
- 「売るとしたらどうする?」
- 「権利書や必要な書類はどこにある?」
- 「家財道具はどうする?」
4つとも、答えを一度に出す必要はありません。当社がご相談でお伝えしている内容をもとに、それぞれ「なぜ先に聞いておくとよいのか」と「聞き方のコツ」を補足します。
① 「将来、この家には誰が住む?」——まず親自身の希望を聞く
これは「相続で誰がもらうか」の話ではなく、親自身がこの家に住み続けたいのか、いずれ住み替える気持ちがあるのかを聞く質問です。ガイドブック第11条「話し合おう。」は、「住まいを将来どうするのか。誰が継ぐのか、売るのか、解体するのか。あらかじめ、親族の間で相談し、方針を決めておきましょう」とし、話し合いで決めておくことを「(必要な場合)誰が所有し、使用するのか」「(必要ない場合)誰が管理し、いつ処分するのか」の2通りに分けて示しています。
聞き方としては、「この家、誰が住むの?」と子の側から決めにかかるより、「お父さん(お母さん)はこの家にずっと住みたい?」「もし一人になったらどうしたい?」と、親の希望を先に聞くのが入り口です。子どもの誰かが戻る予定があるなら、それもこの段階で共有しておきます。
② 「売るとしたらどうする?」——「売る」と決める話ではない
「売るとしたら」は仮定の話です。親が「売ってもいい」と考えているのか、「この家は残してほしい」のか、「子どもたちで決めてくれればいい」のか、どのくらい手放すことに抵抗があるかを知るための質問です。
ここで聞いておくと、相続後の判断がしやすくなります。実家は「売る・貸す・残す」のどれを選んでも一長一短があり(詳しくは実家は「売る・貸す・残す」どれがいい?)、親の意向が分かっているだけで、きょうだい間で「勝手に売るのか」という感情のもつれを避けやすくなります。
③ 「権利書や必要な書類はどこにある?」——「場所」だけでなく「何があるか」
権利書(登記済証・登記識別情報通知)は、相続のときに探し回ることの多い書類の一つです。ただ、この質問の本当の目的は、書類の場所そのものより、実家の名義が誰になっているか、実家以外に土地(田・畑・山林・私道の持分など)がないかを把握することにあります。
ガイドブック第10条「登記しよう。」は、登記の確認には地番や家屋番号が必要で、固定資産税の納税通知書に添付される課税明細書などに記載されていると説明しています。親が元気なうちなら、「固定資産税の通知はどこに届いているか」「権利書はどこにしまってあるか」を聞いて、一緒に見せてもらうだけで、不動産の全体像がつかみやすくなります。名義が祖父母のまま止まっている土地が見つかることもあります(詳しくは祖父名義のままの土地・実家をどうする?)。2026年2月に始まった所有不動産記録証明制度も、名義人ごとの不動産を一覧で確認する手段になります。
④ 「家財道具はどうする?」——仏壇・写真・思い出の品を先に
家財の話は、相続後の「実家じまい」で時間と費用がかかりやすい部分です。ガイドブック第12条「片付けよう。」は、自分以外では捨てるかどうかの判断が難しく時間もかかること、多くの家財が残った空き家は活用が難しく放置されがちであることから、空き家になる前にあらかじめ整理することを勧めています。また同ガイドブック(第12条・第1章4ページ)は、国土交通省「2019年空き家所有者実態調査」をもとに、空き家所有者の23.2%が「仏壇など他に保管場所がないものがある」ことを空き家にしておく理由に挙げていると紹介しています。
全部を片付ける話ではなく、「仏壇はどうしたいか」「残してほしい物は何か」「写真や手紙はどうするか」を親の口から聞いておくだけで、相続後に家族が迷う場面が減ります。
出典: 滋賀県 広報レポート(2026年7月30日更新)/滋賀県 空き家ガイドブック~空き家発生予防21カ条~ 第2章(PDF)(第10条・第11条・第12条)/同 第1章(PDF)(4ページ「空き家にしておく理由」)
帰省のときに切り出す順番——「決める」のではなく「聞く」
年末年始やお盆の帰省は、家族がそろう数少ない機会です。ただ、「この家どうするの?」から入ると、親は「追い出すのか」「財産の話か」と受け取ることがあります。当社がご相談の中でお伝えしている順番は次のとおりです。
- きっかけを外に置く: 「県がこういうレポートを出していて」「知り合いが実家の片付けで大変だったらしくて」など、自分たち以外の話題から入る。県の広報レポートや21カ条は、そのまま「きっかけ」として使える公的資料です
- 親の希望(①)を聞く: 住み続けたいか、いずれ住み替えたいか。ここでは子の意見を言わない
- 書類の場所(③)を一緒に確認する: 権利書・固定資産税の通知・保険証券など。「探しておいて」ではなく「一緒に見ておきたい」と伝える
- 家財(④)は「残してほしい物」から聞く: 捨てる話ではなく残す話から入る
- 「売るとしたら」(②)は最後に、仮定として聞く: ここだけは答えが出なくてもよい
話したあとに、親が元気なうちにできる準備
21カ条の第2章「備えよう。」は、「いずれは空き家になるけれど、そうなってから考えればいいのでは?」という問いに、「いったん空き家になると、さらに対応が難しくなります」と答え、第09条〜第14条で備えを示しています。話し合いのあとに進めやすい順に整理します。
| 21カ条 | 親が元気なうちにできること | 関連する当社コラム |
|---|---|---|
| 第09条 調べよう。 | 建物の築年(1981年5月以前の旧耐震か)、接道、市街化調整区域かどうか、ハザードマップを確認する | 実家を売る前の住宅診断(インスペクション) |
| 第10条 登記しよう。 | 登記事項証明書で名義を確認し、祖父母名義のまま止まっている不動産があれば、相続登記を進める。法務省は、令和6年4月1日から相続登記が義務化され、相続したことを知った日から3年以内に登記する必要があること、令和6年4月1日より前に相続した不動産は令和9年3月31日までに登記する必要があること、正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料が科される可能性があることを案内しています | 相続登記の義務化とは?/祖父名義のままの土地・実家をどうする? |
| 第11条 話し合おう。 | 本記事の4つ。必要なら遺言書・エンディングノート | — |
| 第12条 片付けよう。 | 仏壇・位牌の扱いをお寺に相談する、使っていない物から減らす(生前整理) | 実家の片付け(遺品整理)から売却まで |
| 第14条 任せよう。 | 親の判断能力が低下したときに備える成年後見制度・家族信託の検討 | 成年後見制度が26年ぶりに大改正 |
出典: 法務省 相続登記の申請義務化について/滋賀県 空き家ガイドブック 第2章(PDF)
滋賀での相談先——できること・できないこと
| 相談先 | できること | できないこと・注意 |
|---|---|---|
| 滋賀県 交通まちづくり部 住宅課 企画係(077-528-4235) | 「空き家ガイドブック~空き家発生予防21カ条~」についての問い合わせ | 個別の不動産の査定・売却・相続手続き |
| 実家のある市町の空き家担当課 | 空き家の相談窓口、空き家バンク、補助制度の案内(市町により内容が異なる) | 相続人同士の話し合いの仲介、不動産の媒介 |
| 法務局(大津地方法務局 本局・支局・出張所) | 登記事項証明書の交付、登記手続案内 | 遺産分割の内容の相談、書類の作成代行 |
| 司法書士・弁護士 | 相続登記、遺言書の作成支援、成年後見・家族信託の法務 | 不動産の仲介(売却の媒介) |
| 公証役場 | 公正証書遺言・任意後見契約の作成 | 不動産の査定・売却、相続人同士の話し合いの仲介 |
| 株式会社BATON(077-535-4410・受付9:00〜17:00) | 親が元気なうちの「実家をどうするか」の整理(住む・貸す・売る・残すの選択肢と費用感)、不動産の棚卸し、司法書士・税理士へのおつなぎ | 登記申請そのもの、遺言書の作成、税務の個別判断 |
出典: 滋賀県 広報レポート(問い合わせ先)。市町の窓口は、ハブ記事滋賀で相続した実家が空き家になったらに一覧があります。
草津市に実家があり、大阪府にお住まいのTさん(仮名・50代)は、70代のご両親に「家をどうするか」を聞けずにいました。当社にご相談いただいた際、「決める話ではなく、書類の場所を一緒に確認する話から」とお伝えし、お盆の帰省で固定資産税の通知と権利書を一緒に見てもらったところ、実家の宅地のほかに、亡くなったお祖父様名義のまま残っている畑があることが分かりました。ご両親は「畑のことは誰にも言っていなかった」とのことで、そこから「この家にはできるだけ住みたいが、一人になったら施設も考えている」「仏壇はお寺に相談したい」という希望も聞くことができました。畑の相続登記は司法書士におつなぎし、実家そのものは「ご両親が住み続け、将来は売却も選択肢に入れる」という方針を家族で共有するところまで整理しています。※事例は個人が特定されないよう再構成したものです。ご家庭の事情により進め方は異なります。
まとめ
- 滋賀県の広報レポート(2026年7月30日更新)は、空き家になってから考えるより「空き家にならないように準備する」ことを勧め、滋賀県内の空き家は約8万2千戸(総務省 令和5年調査)と紹介している
- 県の「空き家発生予防21カ条」第07条は、親族で話し合わずにいること自体が、相続後に空き家を生む原因になり得ると整理している
- 家族で話しておきたい4つ=「将来、この家には誰が住む?」「売るとしたらどうする?」「権利書や必要な書類はどこにある?」「家財道具はどうする?」
- 切り出す順番は「決める」ではなく「聞く」。親の希望→書類の場所→残してほしい物→売るとしたら(仮定)の順で、一度に全部を終えなくてよい
- 話したあとは、21カ条の「調べる・登記する・片付ける・任せる」の順に、親が元気なうちにできる準備を進める。法令の数字・期限は法務省など最新の一次情報で確認
遺言書・成年後見・相続登記などの法務は司法書士・弁護士・公証役場・法務局が、税務の個別判断は税理士・税務署が専門の窓口です。株式会社BATONは滋賀県草津市で、「親が元気なうちに実家をどうするか」を住む・貸す・売る・残すの選択肢と費用感から一緒に整理し、必要な専門家におつなぎしています。
「親に何から聞けばいいか分からない」という段階のご相談で構いません。お電話・LINE・フォームで、ご相談は無料です。
よくある質問
Q. 親に「実家をどうするか」と聞くと、怒られそうです。どう切り出せばいいですか?
「決める話」ではなく「聞く話」から入るのが基本です。滋賀県の広報レポートや「空き家発生予防21カ条」のような公的資料をきっかけに、「お父さん(お母さん)はこの家にずっと住みたい?」と親の希望を先に聞き、子の意見や「売る・売らない」の話は後にします。一度の帰省で全部を終える必要はありません。
Q. 権利書が見つかりません。相続のときに困りますか?
権利書(登記済証・登記識別情報通知)の有無にかかわらず、名義や地番は法務局の登記事項証明書で確認でき、地番・家屋番号は固定資産税の課税明細書などで分かります(滋賀県 空き家ガイドブック第10条)。相続登記の手続きで必要になる書類は、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。
Q. 実家以外に祖父名義の土地があることが分かりました。親が元気なうちにやることはありますか?
法務省は、令和6年4月1日より前に相続した不動産について令和9年3月31日までに相続登記をする必要があると案内しています。祖父母名義のまま止まっている不動産は、関係者が増える前に司法書士または法務局に相談することをお勧めします。詳しくは祖父名義のままの土地・実家をどうする?をご覧ください。
Q. 話し合った内容は、どう残しておけばいいですか?
滋賀県の21カ条第11条は、遺言書やエンディングノートを紹介しています。エンディングノートに法的な効力はありませんが、家族で希望を共有する記録として使えます。遺言書は法律の要件を満たす必要があるため、作成は司法書士・弁護士・公証役場などにご相談ください。
※本記事は2026年10月17日時点で公表されている滋賀県・法務省の情報に基づく一般的な解説であり、個別の事案に対する法務・税務上の助言ではありません。遺言書・成年後見・家族信託・相続登記の手続きは司法書士・弁護士・公証役場・法務局に、税務の判断は税理士または税務署にご確認ください。滋賀県の「空き家ガイドブック~空き家発生予防21カ条~」は令和4年3月の発行で、記載された制度・数値はその後改正・更新されている場合があります。実家をどうするかの整理・不動産の売却や活用に関する部分は株式会社BATONがお受けし、必要な専門家におつなぎします。
出典: 滋賀県 広報レポート「『うちは まだ大丈夫』が一番危ない? 実家が空き家になる前に考えたいこと」(更新日2026年7月30日)/滋賀県 空き家発生予防啓発冊子「空き家ガイドブック」(令和4年3月発行・ページ更新日2022年3月9日)/滋賀県 空き家ガイドブック~空き家発生予防21カ条~ 第1章(PDF)(第01条・第02条・第07条・4ページ「空き家にしておく理由」)/同 第2章(PDF)(第09条〜第14条)/法務省 相続登記の申請義務化について
