成年後見制度が26年ぶりに大改正|「終身制」廃止と家族信託との違い・使い分けを解説

「実家の親に物忘れが増えてきた。将来、判断能力が衰えたときに備えて何かしておいた方がいいのでは」——そう感じて調べ始めると、必ず出てくるのが「成年後見制度」と「家族信託」という2つの言葉です。しかも成年後見制度が26年ぶりに大きく改正されることが決まりました。「制度が変わるなら、今検討している対策も変わるのでは?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。この記事では、今回の改正のポイントと、家族信託との違い・使い分けの考え方を分かりやすく整理します。
そもそも成年後見制度とは
成年後見制度は、認知症や知的障害・精神障害などによって判断能力が十分でなくなった方について、家庭裁判所が選任する後見人などが本人に代わって財産管理や契約行為を行う制度です。2000年の制度創設以来、判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれ、いったん後見が始まると、本人が回復しない限り原則として本人が亡くなるまで続く「終身制」が特徴でした。この終身制であるがゆえに、「一度後見人がついたら、家族の意向だけで柔軟に財産を動かせなくなる」という声が根強くあり、使い勝手の悪さが長年の課題として指摘されてきました。
今回の改正で何が変わるのか
今回の改正は、2026年4月3日に法案が国会に提出され、同年6月17日に参議院本会議で成立した、と各士業事務所の解説記事で報じられています。事実であれば制度創設から26年目にして初めての抜本改正となります。ポイントは大きく次の2点です。
- 「終身制」の廃止: 本人の状況に必要な期間だけ制度を利用できる仕組みに転換します。これまでのように、一度開始したら原則本人が亡くなるまで続く、という前提が見直されます。
- 「アラカルト型」への転換: 従来の「後見・保佐・補助」という3類型の区分を見直し、本人に本当に必要な支援の範囲だけを、必要な期間だけ選んで利用できる仕組みへと一本化する方向性が示されています。
家族信託とは何が違うのか
家族信託は、家庭裁判所を通さず、本人(委託者)が元気なうちに、信頼できる家族(受託者)と契約を結んで財産の管理・処分を託しておく仕組みです。成年後見制度との主な違いは次の表の通りです。
| 比較項目 | 成年後見制度(改正後) | 家族信託 |
|---|---|---|
| 開始のタイミング | 判断能力低下後(家庭裁判所が関与) | 元気なうちに契約で準備 |
| 財産の自由度 | 家庭裁判所の監督下、財産保全が基本 | 契約内容次第で比較的柔軟 |
| 利用期間 | 必要な期間に限定(改正後) | 契約で定めた期間 |
| 身上監護(介護契約等) | 制度上できる | 原則できない(信託は財産管理のみ) |
家族信託は「財産の柔軟な活用」に強みがある一方、本人の医療・介護に関する契約行為(身上監護)はカバーできません。逆に成年後見制度は身上監護も含めて本人を法的に保護できる点が強みです。改正後の成年後見制度は、この「柔軟性の低さ」という弱点がある程度改善される見込みですが、家庭裁判所が関与する枠組みである点は変わりません。
うちの実家にはどちらが向いている?
判断のおおまかな目安は次の通りです。
- すでに判断能力の低下が始まっている、または医療・介護の契約行為も心配 → 成年後見制度(改正後の制度)が選択肢になります。
- まだ判断能力はしっかりしているが、将来の実家の売却や資産の活用に備えて今のうちに準備しておきたい → 家族信託が選択肢になります。
- どちらか一方ではなく、財産管理は家族信託、身上監護は任意後見契約、という組み合わせも実務上よく使われる方法です。
まとめ|制度が変わっても「早めの準備」が肝心
今回の成年後見制度改正は、「終身制」という最大のネックに手を入れる26年ぶりの大きな転換点です。とはいえ、施行時期や運用の詳細はまだ固まっていない部分も多く、家族信託との使い分けの基本的な考え方(財産の柔軟な活用か、身上監護も含めた法的保護か)は改正後も大きくは変わらないと考えられます。大切なのは、制度のどちらを使うにしても「判断能力が衰える前」に家族で話し合い、準備を始めておくことです。
よくある質問
Q. 成年後見制度の改正はいつから始まりますか?
2026年6月17日に法律が成立したと各士業事務所の解説記事で報じられていますが、施行時期や運用の詳細は今後政令等で定められる見込みで、2026年7月時点では確定していません。最新情報は法務省など公的機関の発表でご確認ください。
Q. 家族信託と成年後見、どちらを選べばいいですか?
判断能力がしっかりしているうちに財産の柔軟な活用に備えたい場合は家族信託、すでに判断能力の低下や医療・介護の契約への備えも必要な場合は成年後見制度が選択肢になります。ご家族の状況によっては組み合わせることもあります。
Q. 家族信託だけで親の介護に関する契約もできますか?
家族信託は財産管理のみが対象で、医療・介護に関する契約行為(身上監護)はカバーできません。身上監護も必要な場合は、任意後見契約などと組み合わせる方法が実務でよく使われます。
※本記事は2026年7月時点で公表されている情報に基づく一般的な解説であり、個別の事案への法的助言ではありません。改正案の提出日・成立日は士業事務所の解説記事に基づく情報であり、法務省・国会等の一次情報での確認は取れていません。制度の施行時期・運用の詳細も含め、最新情報は法務省等の公式情報でご確認いただくか、専門家にご相談ください。
