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不動産売却

相続した農地・田んぼが耕作できないとき|農業委員会への届出から「貸す・売る・手放す」まで【滋賀・草津】

公開日: 2026年8月18日|執筆: 株式会社BATON(相続と実家の相談室【滋賀県】)

相続した農地・田んぼ

「実家を相続したら、家と一緒に田んぼが3枚ついてきた」——滋賀県内でご相談を受けていると、こうしたお話をよくうかがいます。親御さんは自分で耕していた。けれど自分は会社勤めで農業の経験がなく、住まいも離れている。売ろうにも、農地を不動産屋さんが扱ってくれるのかも分からない——。農地は、宅地とは別のルール(農地法)が重なる分だけ、相続後の動きが取りにくい財産です。この記事では、まず必要になる手続きと、「貸す・売る・手放す」それぞれの出口を、農林水産省・法務省・滋賀県の公式情報をもとに整理します。

まず「農業委員会への届出」— 相続登記とは別の手続き

農地を相続したら、相続登記(法務局)とは別に、農業委員会への届出が必要です。根拠は農地法第3条の3。農地の売買や貸し借りが原則として許可制であるのに対し、相続のように許可なく権利が移るケースを農業委員会が把握するための仕組みです。

項目内容
届出先その農地がある市町の農業委員会(草津市であれば市の農業委員会事務局)
期限条文上は「遅滞なく」。農林水産省の処理基準は、これを「権利を取得したことを知った時点からおおむね10か月以内の期間とする」としています
届出をしないと届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合、10万円以下の過料に処せられることがあります(農地法第69条)

この届出は、権利の移転そのものを発生させるものではありません(処理基準にもその旨が明記されています)。相続登記は別途必要で、2024年(令和6年)4月1日から義務化されており、こちらは「相続によってその不動産を取得したことを知った日から3年以内」が期限です(詳しくは相続登記の義務化のコラムをご覧ください)。

農地を相続した方は、登記の3年と、届出のおおむね10か月という2つの時計を同時に持っています。届出のほうが先に来ますので、まず市町の農業委員会に電話をして必要書類を確認するところから始めるのが現実的です。

出典: 農林水産省 農地相続ポータル同 農地法関係事務に係る処理基準について(平成12年6月1日12構改B第404号)/e-Gov法令検索 農地法

農地は「売る」「貸す」にも許可が要る

届出を終えても、農地はすぐ自由に処分できるわけではありません。農林水産省は「農地を貸す・売る場合は、原則、農業委員会の許可が必要」としています(農地法第3条)。宅地なら買いたい人が現れれば売買できますが、農地は「誰に渡すか」に条件がかかるため、相手が農業をする方でなければ原則として認められません。

農地以外に転用して売る・使う場合は、農地法第4条・第5条の転用許可が別に必要です。こちらの許可権者は農業委員会ではなく、都道府県知事等(農林水産大臣が指定する市町村の区域内では、その市町村長)。転用の可否はその農地が都市計画上どの区域にあるかなどで判断され、区分によっては原則として許可されません

ただし例外があり、市街化区域内の農地は、あらかじめ農業委員会に届け出れば転用の許可は不要とされています(農地法第4条第1項第7号・第5条第1項第6号)。同じ「田んぼ」でも、市街化区域か市街化調整区域かで手続きの重さがまったく変わります。逆に「宅地にして売ればいい」と話を進めた結果、そもそも転用できない農地だった、というのも少なくない行き違いです。

要る手続きは農地ごとに変わります。着手前に農業委員会で「この農地は何ができるか」を確認するのが、遠回りに見えていちばん早い順路です。行政書士や司法書士が手続きを代理する分野でもあります。

出典: 農林水産省 農地相続ポータルe-Gov法令検索 農地法(第3条・第4条・第5条)

借り手を自分で探せないときの「農地バンク」

「貸したいが、誰に声をかければいいか分からない」という場合の受け皿が、農地中間管理機構(農地バンク)です。都道府県ごとに1つ指定された法人が、農地を貸したい人から借り受けて担い手へまとめて貸し付ける仕組みで、所有者不明農地や遊休農地も対象に含まれます。

滋賀県の機構は、公益財団法人 滋賀県農林漁業担い手育成基金です。県のページによると、機構は市町が作成する地域計画に基づいて農地を借り受け、担い手へ貸し付けます。申請の手順や必要書類は市町ごとに案内が異なりますので、まずは農地のある市町の農業担当課、または滋賀県 農政水産部 みらいの農業振興課 地域農業戦略室(電話 077-528-3845)にご相談ください。

相手を探す手間と契約交渉を任せられるのが利点ですが、地域計画との関係や農地の条件によっては引き受けが難しい場合もあります。「必ず借りてもらえる」と考えず、可能性を確認する姿勢で問い合わせるのが安全です。

出典: 滋賀県 農地中間管理事業について農林水産省 農地中間管理機構

「国に引き取ってもらう」— 農地でも使えるが、通るとは限らない

貸すことも売ることも難しい農地については、相続土地国庫帰属制度(令和5年4月27日開始)も選択肢になります。農地も対象で、審査手数料は土地一筆当たり14,000円、承認後は負担金を納めます。

法務省の運用状況(令和8年6月30日時点・速報値)では、申請5,698件のうち田・畑は2,226件で、地目別では最多です。ただし、どの農地でも当然に引き取ってもらえるわけではありません。却下事由には「建物がある土地」「境界が明らかでない土地」が含まれ、取り下げられた1,063件のうち375件は「却下・不承認であることが判明したため」とされています。

農機具小屋やビニールハウスが残っている、畦の境界がはっきりしない、といった状態は先に整理が必要です。いきなり申請するより、まず法務局の事前相談で見込みを確認する順番をおすすめします。

制度そのものの費用や要件の詳細は、相続した山林・使わない土地を手放すには?で解説しています。

出典: 法務省 相続土地国庫帰属制度の概要同 統計(令和8年6月30日時点・速報値)

事例(仮名)
草津市のBさん(50代)は、お父様から自宅と市内の田3枚を相続。農業の経験はなく、当面は近隣の方に管理をお願いしている状態でした。まず市の農業委員会へ第3条の3の届出を済ませ、並行して相続登記を進めたうえで、農地バンクへの貸付けの可否を市の窓口で確認する——という順番を、手続の代理は行政書士・司法書士にお願いする前提で、ご一緒に整理しました。※事例は個人が特定されないよう再構成したものです。

まとめ

この記事は一般的な制度の説明です。個別の農地について何ができるかの判断は、農業委員会や、行政書士・司法書士・税理士などの専門家にご確認ください。

「実家は片付いたけれど、田んぼが残っている」——そんな段階のご相談も歓迎です。BATONでは、滋賀県内の相続・空き家・土地のお困りごとについて無料相談を承っています。何から手をつければよいか分からない段階でかまいませんので、お気軽にお声かけください。

よくある質問

Q. 農地を相続したら、農業委員会への届出はいつまでにすればよいですか?

農地法第3条の3は「遅滞なく」届け出るよう定めており、農林水産省の処理基準(平成12年6月1日12構改B第404号)は、この「遅滞なく」を、農地等についての権利を取得したことを知った時点からおおむね10か月以内の期間としています。届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は、農地法第69条により10万円以下の過料に処せられることがあります。届出先は農地のある市町の農業委員会です。

Q. 相続した農地は自由に売ったり貸したりできますか?

農林水産省は「農地を貸す・売る場合は、原則、農業委員会の許可が必要」としています(農地法第3条)。宅地などに転用して売る場合は、農地法第4条・第5条の転用許可が別に必要で、許可権者は農業委員会ではなく都道府県知事等です。ただし市街化区域内の農地については、あらかじめ農業委員会に届け出れば転用の許可は不要とされています(農地法第4条第1項第7号・第5条第1項第6号)。個別の農地について何ができるかは、農地のある市町の農業委員会にご確認ください。

Q. 借り手が見つからない農地はどこに相談すればよいですか?

農地中間管理機構(農地バンク)という仕組みがあります。都道府県ごとに1つ指定された法人が、農地を貸したい人から借り受けて担い手へ貸し付けるもので、滋賀県の機構は公益財団法人 滋賀県農林漁業担い手育成基金です。申請の手順や必要書類は市町ごとに案内が異なりますので、まずは農地のある市町の農業担当課、または滋賀県 農政水産部 みらいの農業振興課 地域農業戦略室(電話 077-528-3845)にご相談ください。

※本記事は2026年8月18日時点で公表されている農林水産省・法務省・滋賀県の情報に基づく一般的な解説であり、個別の事案に対する税務・法務上の助言ではありません。制度は改正・運用変更される場合があり、法務省の統計は速報値のため更新されます。実際の手続きや判断にあたっては、必ず農業委員会および有資格の専門家にご確認ください。
出典: 農林水産省 農地相続ポータル同 農地法関係事務に係る処理基準について同 農地中間管理機構e-Gov法令検索 農地法滋賀県 農地中間管理事業について法務省 相続土地国庫帰属制度の概要同 統計同 相続登記の申請義務化

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