空き家のことで市役所から連絡が来たら|「管理不全空家」の指導・勧告の流れと、固定資産税の特例が外れる場面【2026年9月時点】

「亡くなった父の家について、市役所から手紙が届きました。何か悪いことをしたのでしょうか」——空き家になった実家について、こうしたご不安の声をうかがうことがあります(ご相談内容をもとに再構成した一般的な例です)。遠方に住んでいて、実家の様子をしばらく見に行けていない。相続の手続きも終わっていないから、自分が「持ち主」だという実感もない。そんなときに行政から連絡が来ると、身構えてしまうのは当然です。ただ、国のガイドラインを読むと、最初の連絡がいきなり「処分」であるとは限らないことが分かります。この記事では、国土交通省のガイドライン(令和8年9月3日改正版)と空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家法」)をもとに、①なぜ連絡が届くのか、②連絡のあとに何が起こり得るのか、③固定資産税の特例が外れるのはどの段階か、④連絡が来たら(来る前に)何をすればよいか、を順に整理します。
目次
なぜ、自分のところに連絡が届くのか
空家法第10条は、市町村長が固定資産税の課税などのために持っている所有者の情報を、空家法の施行に必要な限度で内部利用できること(第1項)、関係する地方公共団体の長や「空家等に工作物を設置している者」などに、所有者の把握に必要な情報の提供を求められること(第3項)を定めています。
国土交通省のガイドラインは、所有者を特定するために想定される調査方法として、次のようなものを挙げています。
- 登記情報(登記名義人の氏名・住所)の確認
- 住民票の写し等・戸籍の附票の写し、戸籍の確認(現住所や法定相続人の確認)
- 固定資産課税台帳の記載事項の確認
- 親族や関係権利者への聞き取り
- 水道・電気・ガスの供給事業者の保有情報や、郵便の転送情報の確認
あわせてガイドラインは、令和4年8月から住民基本台帳ネットワークシステムを使った最新住所の探索が、令和6年3月1日から戸籍情報連携システムによる他市町村の戸籍情報の取得が可能になったこと、日本郵便株式会社に郵便の転送情報を求める際の運用について令和8年3月18日付の事務連絡が出ていることを記載しています。
出典: e-Gov法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法/国土交通省 管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)
最初の連絡は「事情の聞き取り」であることも
ガイドラインは、空き家の所有者が遠くに住んでいて状態を把握していないことや、相続で取得したために自分が所有者だと認識していないことがあり得るとしています。そのうえで、まずは所有者に連絡を取って現状を伝え、今後の改善の考えや、処分・活用の意向を含めた事情の把握に努めることが望ましいとしています。この聞き取りは、書面に限らず対面や電話でもよく、法律上の手続としてではなく任意の聞き取りとして行うことも考えられるとされています。
さらに、管理不全空家等に当たると考えられる場合でも、直ちに指導の手続を始めるのではなく、たとえば次のような事情を踏まえて、相談先や助成制度を紹介して解決を図ることも考えられる、としています。
- 改善の意思はあるが、どうすればよいか分からない
- 遠隔地に住んでいて、自分では対策が取れない
- 費用の面では対応できるが、身体的な理由などで動けない
つまり、届いた連絡に「まずは状況を教えてほしい」という性格のものが含まれている可能性があります。連絡に応じて、自分の事情を伝えることが第一歩です。
連絡のあとに起こり得ること——「管理不全空家」と「特定空家」
空家法には、状態に応じて2つの段階があります。
| 管理不全空家等 | 特定空家等 | |
|---|---|---|
| どんな状態か | 適切な管理が行われず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態(法第13条第1項) | 倒壊等の危険、衛生上の有害、景観の阻害など、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態(法第2条第2項) |
| 市町村ができること | 指導 → 勧告(法第13条) | 助言又は指導 → 勧告 → 命令 → 代執行(法第22条) |
| 命令・代執行 | 規定されていない | あり(命令違反は50万円以下の過料=法第30条第1項) |
出典: e-Gov法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法/国土交通省 ガイドライン
管理不全空家等の段階では、ガイドラインが「命令や代執行のような強い公権力の行使に係る措置は規定されていない」と明記しています。また、指導をしていなければ勧告はできないとされ、その理由を「まずは指導を行うことにより、所有者等による自発的な状態の改善を促すため」と説明しています。
一方、特定空家等については、助言又は指導、勧告、命令、代執行の手続を順を経て行う必要があるとされています(災害などの緊急時には、助言又は指導・勧告を経たうえで命令を経ずに代執行できる緊急代執行があり、所有者を確知できない場合には略式代執行があります)。
なお、特定空家等に対する措置(法第22条)のために、市町村長が法第9条第2項に基づいて報告を求めた場合、報告をしない・虚偽の報告をする・立入調査を拒むといった行為は20万円以下の過料の対象です(法第30条第2項)。管理不全空家等に対する措置のためにこの報告徴収や立入調査を行うことは認められない、とガイドラインは整理しています。
固定資産税の特例が外れるのは「勧告」の段階
住宅が建っている土地は、固定資産税・都市計画税の住宅用地特例を受けているのが一般的です。草津市の案内によると、次のとおりです。
| 区分 | 固定資産税の課税標準額 | 都市計画税の課税標準額 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(200平方メートル以下の住宅用地) | 評価額の6分の1 | 評価額の3分の1 |
| 一般住宅用地(小規模住宅用地以外の住宅用地) | 評価額の3分の1 | 評価額の3分の2 |
ガイドラインは、管理不全空家等・特定空家等について市町村長が勧告したとき、その敷地は地方税法の規定により住宅用地特例の対象から除外されるとしています。空家法の措置としては、指導の段階ではなく勧告の段階である点がポイントです。勧告は書面で行うものとされ、特例から除外される旨も併せて示すべきとされています。
知っておきたい点が、ほかに3つあります。
- 措置の実施が確認されれば、勧告は撤回される — ガイドラインは、指導・勧告に係る措置の実施が確認されれば管理不全空家等ではなくなり、勧告は撤回され、特例の要件を満たす家屋の敷地であれば特例の適用対象となるとしています
- 相続や売却で所有者が変わっても、勧告の効果が続く場合がある — 勧告後に建物か敷地の一方だけ所有者が変わっても、変わらなかった所有者に対する勧告の効力は続き、効果も継続するとされています。なお、建物と敷地の両方の所有者が変わった場合は勧告の効力は失われますが、新しい所有者に対して改めて指導・勧告を行う必要があるとされています
- そもそも住宅と認められない家屋は特例の対象外 — 使用の見込みがなく取壊し予定である場合など、客観的に今後人が住む見込みがないと認められる家屋の敷地は、管理不全空家等かどうかにかかわらず特例が適用されないとされています
出典: 草津市 土地の評価について/国土交通省 ガイドライン/草津市 空き家の適切な管理をお願いします
連絡が来たら、来る前に、しておきたいこと
- 連絡を放置せず、担当課に状況を伝える — 遠方に住んでいる、相続手続き中、費用の見通しが立たないなど、事情はそのまま伝えて構いません。草津市の空き家の窓口は、都市計画部 建築政策課 住まい政策係(077-561-1502)です
- 公的な相談の仕組みを使う — 草津市は「空き家相談員派遣」を行っており、活用方法、賃貸・売買・管理、リフォーム・解体、専門業種の紹介などの相談に応じています。利用料は無料で、相談員は滋賀県宅地建物取引業協会・全日本不動産協会と連携しています(相談員に正式に依頼する場合は費用が発生することがあります)
- 名義を確かめる — 登記名義が亡くなった親のままなら、相続登記にも期限があります(詳しくは相続登記の義務化とは?)
- 「管理する・売る・解体する」の見通しを立てる — 指導で求められる改善(修繕、立木竹の伐採など)が一時しのぎで終わるのか、今後も続く管理になるのかで、選ぶ道が変わります(詳しくは実家は「売る・貸す・残す」どれがいい?、実家の解体費に使える補助金は?)
出典: 草津市 空き家相談員を派遣します
県外にお住まいのEさん(仮名)は、実家について市から連絡を受け、庭木が隣地に越境していると知りました。まず伐採を手配したうえで、今後も通えない事情を考え、売却を含めた検討を始めることになりました。※事例は個人が特定されないよう再構成したものです。行政の対応やご家庭の事情によって進め方は異なります。
まとめ
- 登記・住民票・戸籍・固定資産課税台帳のほか、水道・電気・ガスや郵便の転送情報の確認なども、所有者を調べる方法として想定されています(空家法第10条・国交省ガイドライン)。どこまで調べるかはケースごとに判断されます
- ガイドラインは、まず所有者の事情を把握し、状況によっては相談先や助成制度を紹介することも考えられるとしています。連絡には応じて、事情を伝えることが第一歩です
- 管理不全空家等は「指導→勧告」までで、命令・代執行はありません。特定空家等は「助言又は指導→勧告→命令→代執行」で、命令違反は50万円以下の過料です
- 空家法の措置で住宅用地特例(小規模住宅用地で固定資産税の課税標準が6分の1になる、など)が外れるのは勧告の段階。措置の実施が確認されて勧告が撤回されれば、要件を満たす敷地は再び特例の対象になります
- 行政からの連絡を待つより、自分のペースで方針を決められるうちに動くほうが、選べる道を残しやすくなります
指導・勧告の内容や法的な対応は市町村の担当課・弁護士、税額の判断は市町村の税務担当課、登記は司法書士または法務局が専門です。株式会社BATONは滋賀県草津市で、空き家の現地確認・管理の段取り・査定・片付け・売却といった不動産に関する部分をお手伝いし、必要な専門家におつなぎしています。
「市から連絡が来たけれど、何から手をつければいいか分からない」という段階でも構いません。ご相談は無料です。
よくある質問
Q. 市役所から空き家について連絡が来ました。すぐに税金が上がりますか?
空家法の勧告によって住宅用地特例の対象から外れるのは、市町村長が管理不全空家等・特定空家等として勧告をしたときとされています。ただし、今後人が住む見込みがないと認められる家屋の敷地は、勧告の有無にかかわらず特例の対象外となる場合があります。ご自身の課税関係は市町村の税務担当課にご確認ください。
Q. 管理不全空家等と判断されると、行政に家を壊されてしまうのですか?
管理不全空家等に対して空家法が定めている措置は指導と勧告で、国土交通省のガイドラインは「命令や代執行のような強い公権力の行使に係る措置は規定されていない」としています。代執行があり得るのは、特定空家等について助言又は指導・勧告・命令を順に経た場合などです。
Q. 住所を変えていても、市は所有者を見つけられるのですか?
国土交通省のガイドラインは、住民票や戸籍の附票、固定資産課税台帳のほか、水道・電気・ガスの供給事業者の保有情報や郵便の転送情報の確認などを調査方法として挙げています。ただし、どこまで調べるかはケースごとに判断するとされています。
Q. 勧告を受けたあとに改善したら、特例は戻りますか?
国土交通省のガイドラインは、勧告に係る措置の実施が確認された場合は勧告を撤回し、特例の要件を満たす家屋の敷地は特例の適用対象となるとしています。具体的な適用時期は、市町村の税務担当課にご確認ください。
Q. 相続登記が済んでいない実家でも、連絡は来ますか?
国土交通省のガイドラインは、相続で取得したため自分が所有者だと認識していない可能性も想定したうえで、登記名義人の相続人を戸籍などで確認する方法を挙げています。相続人に連絡が届くことは考えられます。
Q. 草津市では、どこに相談すればよいですか?
草津市の空き家の窓口は、都市計画部 建築政策課 住まい政策係(077-561-1502)です。市は滋賀県宅地建物取引業協会・全日本不動産協会と連携した空き家相談員の派遣(利用料無料。相談員に正式に依頼する場合は費用が発生することがあります)も行っています。
※本記事は2026年9月15日時点で公表されている法令・国土交通省・草津市の情報に基づく一般的な解説であり、個別の事案に対する法務・税務上の助言ではありません。指導・勧告等の措置の判断は各市町村が行います。個別の対応は市町村の担当課・弁護士、税額は市町村の税務担当課、登記手続は司法書士または法務局にご確認ください。空き家の現地確認・管理の段取り・査定・片付け・売却など不動産に関する部分は株式会社BATONがお受けし、必要な専門家におつなぎします。
出典: e-Gov法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法/国土交通省 管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)/国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報/草津市 空き家の適切な管理をお願いします/草津市 空き家相談員を派遣します/草津市 土地の評価について
